納棺の儀はしんみりするだけじゃなくて

今日は母の葬儀のことを書く。何度も書いているが、うちの親戚軍団はとにかく団体様。30人の身内が集まっての大家族葬になった。

母はこういった親戚たちの集まりが好きだった。とにかく楽しいようでしゃべり続けていた。そんな母だったから、自分の葬儀にみんなが集まってくれたことは、本当に喜んでくれているのでは、と思っている。


9月29日(日) 母葬儀の日。朝、弟たちと一緒に車で会場に向かう。

そういえば昨日は大変だった。「葬式に来ていく服どこ???」

母がいないと何がどこにあるやらさっぱりわからない。リビングのクローゼット開いたらほとんど母の服。そこを掘って掘って掘って掘り起こして、ようやく自分の葬式用の服を探し出した。今思えばよく探し出したと思う。もし見つからなかったら???黒デニムに黒Tシャツになるとこだった。

まずは新横浜の駅に車を止め、崎陽軒で会葬御礼品の買い物をする。葬儀屋の葬儀一式にセットされている返礼品は注文しなかった。海苔だとかお茶だとかもらって嬉しいかな?ま、嬉しい人は嬉しいか。カタログギフトなんて人もいるな。でも、せっかく横浜に来てもらったわけだし、母は親戚のどっかに行くって言うと崎陽軒買ってお土産にしてたし、そんなつもりで、会葬御礼品というよりも母の思い出のお土産ってことで、崎陽軒のシウマイと月餅を購入する(崎陽軒はしゅうまいでなくシウマイ)。赤い包み紙は場違いかもしれないが、元気に明るく送ろうぜ!っていうウチラらしくてよかったと思う。そういえば前年の祖母の時もそうした。

斎場に着く。叔母や本家のメンバー、一番下の叔父ファミリーも同じく到着。

ここからまずは、選ばれたメンバーのみで「納棺の儀」に参加する。その部屋は、「家族葬なら」と葬儀屋に最初に紹介されたこじんまりした部屋。ばーちゃんの葬式はこの部屋で済ませたんだった。MC担当の(こういうときはMCって言わないか、「おくりびと」だ)のおにーさんは、やっぱりばーちゃんの時と同じ人。納棺の儀は、自分と弟夫婦、姪甥、叔母、義叔母、下の叔父夫婦、本家の長男従兄弟が参加する。

本来着替えもさせる納棺の儀だが、既に着替えを済ませた母がそこに寝ていた。

儀式の一つ一つをおにーさんが説明してくれる。

まずは「末期の水」死に水ってやつだ。棒の先っぽについた綿に水が染み込んでいて、それを順番に母の口元に当てる。潤いを持たせて生き返ってもらおうという思いや、あの世で喉の渇きで苦しまないようにという願いが込められる。母は休みなくお茶を飲んでいた人だから、久しぶりの水分、喜んだだろう。

そして「湯灌」。おけにお湯が入っていて、そこでタオルを絞る。そのタオルを受け取ったら、やはり順番に母の顔、手、足を拭いていく。これはお清め。生前のけがれや苦しみを洗い流し、生への煩悩を断ち、良い来世を迎えるようにと願いを込めての儀式なのだそうだ。

次は「死化粧」。ここでお化粧を担当するおねーさんから難問が出される。「故人様は生前どのようなお化粧をされていましたか?」これは難しい!母は普段ほとんどメイクをしていなかったから。なんとリクエストすべきなのか。母の化粧姿なんて、我々子供たちを学校に通わせるため、昼のみならず夜の仕事にも出かけていたときの、ケバケバしい“水商売メイク”しか覚えてないよ。みんなちょっと慌てる。何ていう?「聖子ちゃん風とか?」「倖田來未的な?」…etc。結果お願いしたのは。。。

「お任せします」「ナチュラルメイクで」「普通に」。。。結構かぶった。困った我々を見て困った担当のおねーさんは、「では故人様の表情があまり変わらないように」と平和に治めてくれた。

そしていよいよ死装束。本格的な「旅支度」だ。ひとつひとつのパーツを担当のおにーさんが紹介してくれる。うらめしやぁ~って出てくるお化けがしてる三角の“天冠”は付けなかった。腕には“手甲”、足には“脚絆”を付ける。野球選手のプロテクターみたいな位置に。一つ一つ付けたあとに家族が紐を結んであげる。それから“足袋”。それもポチッポチッっと履かせてあげる。遺体のそばには、あの世に逝くまでの日差しを防ぐ“編笠”としっかり歩いて行けるための“草履”が添えられた。お出かけポーチの“頭陀袋”も持たせてもらった。中の六文銭は本物ではなく、それが書かれた紙。最後は“数珠”を持たせるんだけど、それは私が自宅から持ってきた「母がいつも使っているもの」を持たせた。

ここで私は気づく。「母のは持ってきて、自分の数珠は忘れた」

昨日の服探しから、母がいなくなると私はこんなもんだ。いいよ、素手で拝む。

その一つ一つの儀式が進められる中、さすがに叔母は立ち上がるのも辛いくらい泣きじゃくっている。係りの人が心配してお水を持ってきてくれたが、なかなか治まらない。先に逝く弟を送り、また姉を送る。やっぱり兄弟ってそうなってしまうものか。義叔母に支えられ、叔母はいろいろなお見送り作業をやっとこなした。

一番下の叔父は言う。「ひと泣きすれば落ち着くから大丈夫」

ほんとだ!ひと泣きしたら大丈夫だ!!もう母の遺体にチューして、ピースして写真撮ってる!!!!

そんな面白シーンを含め、納棺の儀は終了した。母はお棺に入って会場に運ばれる。私たち家族はその間、待合スペースで待ち、他の参列者を迎える。さぁ、これから本番。母の一日葬が始まる。


これが私たち親戚軍団の「寂しくて泣いてしまうけど、涙だけじゃなく明るく元気に送ってあげよう」というお見送りだ。本家の祖父や叔父の時も面白シーンはいろいろあった。

きっと母は「ほんと、あんたたちなにやってんの(笑)」と突っ込んでいるはずだ。

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